第6回石川県能登半島地震災害支援8月22日~24日

輪島市の災害支援、技術ボランティアの一員として作業に参加させていただいた。地震当初より行かねばと心に決めていたもののなかなか時間が取れず今となってしまった。

京都を夕方に出発、沢山の方々が必死で復旧されたであろう継ぎはぎだらけの道路を夜中にひた走り輪島市入り。途中、倒壊家屋はいくつか目にしたものの、夜が明けて街に出て目に飛び込んできた想像を絶する光景にただただ絶句。どこを向いても視界に入る倒壊家屋、歩車道の割れ、段差、山は土砂崩れという言葉に収まらないほどの崩れ、海は隆起し陸に上げられた船の数々。初めて大規模な災害現場を目の当たりにし、今まで経験した事のない気持ちの高ぶり。

初日のボランティア作業が終わった後、街の様子を見て回る。焼け焦げた朝市の跡地。所々に手向けられた花束。手を合わせご冥福を祈る。想像を絶する苦しみの中逝かれたと思うと心が締め上げられる。

滞在中、街ではキリコ祭りが行われた。キリコと呼ばれる大きな灯篭を担ぎ街を練り歩く。担ぎ手は皆若く祭りのために帰省した人も大勢いると聞く。年長者もいるが彼らは前に出ず補佐役に徹しているように見受けられる。若い担ぎ手たちに、この街の未来を感じる。

途中花火が打ち上げられる。この花火は地元の高校生が企画し全国に協力を呼び掛けて実現した花火との事。それを聞き心震える。

祭り終盤、倒壊したビルの前をキリコが通る。気勢を上げ邪気を払うかのように神輿が回る。倒壊し、時間が止まってしまった過去と、これからを担う若者の未来が交錯するように見えた。

 

まだ復興は始まったばかり。能登の被害に遭われた方々に心を寄せ、一日も早く平穏な生活が取り戻せるよう出来る限りの支援を尽くすことを心に誓う。

 

「作業に参加しての所感」

地震から8カ月が経ち主要な道路や水道など主要な大きなインフラは復旧しつつあるように感じた。倒壊家屋はまだそのほとんどがそのままの状態であり公費解体がようやく始まったように見受けられる。被災された方々の要望は多岐に渡り、遠方に避難された方々の帰省など、人の動きによって要望の数も変化するとの事であった。地域の社会福祉協議会が住民からの要望を吸い上げ依頼書を作成、依頼書には住所、依頼内容、条件、地図のQRコード、写真など細かい情報が添えられ、依頼内容により技術ボランティアと一般ボランティアに区分され非常にわかりやすい仕組みが構築されていた。聞けばCMなどでも流れている業務改善プラットフォームを扱っている会社のシステムでこれまでの災害現場などで経験を蓄積し運用されているとの事。経験値の蓄積は何事においても重要であり、このような災害時での蓄積は何者にも代えがたい財産だと感じた。

我々庭師の職能は災害現場や復旧の場での適応能力はかなり高いのではないかと常々考えていた。今回の作業に参加してその思いは確信へと変わった。

我々が扱うことの出来る重機・道具類の幅の広さ、重量物の搬出・運搬・搬入。掘削・切断・解体、構造物の仕組みの理解など全て日常の仕事で行っている事であり、これほど多種多様の工種に対応できる業種は他にないのではないだろうか。

有事の際、被災地での初動、人命救助は消防・警察・自衛隊の官が主体となるであろう。しかし救助が終わった後の復旧・支援では我々、民も官に引けを取らない能力を持っているのではないだろうか。ただやはり民のみではできることに限りがあり、官に比べ制約も多いかと思う。来るべき災害に備え、官・民の垣根を超えた仕組みを作ることが出来れば今よりできる事の幅が広がり、さらに有効な活動を行うことが出来るかと思う。その為には我々に何ができるのか考え、行動に移していかなければならないだろう。

輪島の家々を見ると旧家のほとんどが黒い瓦に鎧張りの外壁となっている。黒い瓦は雪を少しでも早く溶かすためであろうか、鎧張は日本海特有の風雪や風雨から家を守るためであろうか。

などと家々を見ながら思いめぐらす。その土地で手に入る材料でその土地の気候に対応した家を建てる。用を満たしたデザインの集合体が統一された街並みとなり、その町を象徴する風景となる。その風景がたった数十秒の揺れで無残な姿となってしまった。

大きな時間の流れから見ればそれは今の日本列島を形作った地殻変動の一端なのであろう。被った被害は甚大で未曽有の災害を前に、ただただ人の小ささを思い知らされた。しかし人の可能性に限りはなく出来る事は無限にあると信じている。いつの日か復活なったかの地に家人を連れ訪れたいと思う。その為には自分に何ができるのか、我々はどうあるべきか。来るべき災害への備えを整えつつ、かの地での経験を蓄積し、できる事の幅をさらに広げ、携わる人々の輪を広げて、皆心ひとつでありたいと願う。伊庭知仁

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